当協議会について
代表理事挨拶
近年、地球温暖化の進行やエネルギー価格の高騰、さらには頻発する自然災害への対応など、住宅を取り巻く社会環境は大きく変化しています。住宅分野においても、脱炭素社会の実現に向けた具体的な取組が強く求められており、その中核を担う存在として、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及拡大がますます重要となっています。住宅は、一度建設されると数十年にわたり使用される社会資産です。そのため、建設時の性能が将来のエネルギー消費量や居住者の暮らし方に大きな影響を与えます。こうした背景のもと、従来のZEHをさらに発展させた「GX ZEH」「GX ZEH-M」の制度化と本格的な普及に向けた取組が進められています。
GX ZEHは、国が掲げる「GX2040ビジョン」とも連動し、脱炭素と経済成長の両立を住宅分野から実現しようとする新たな挑戦です。断熱等性能等級6以上の高い外皮性能に加え、再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量を35%以上削減する厳しい基準が求められます。さらに、太陽光発電、蓄電池、HEMSなどを組み合わせることで、再生可能エネルギーの自家消費を促進し、住宅そのものがエネルギーを効率的かつ最適に活用する時代へと移行しようとしています。
特に蓄電池の導入が要件化されたことは、単なる省エネルギー住宅から、エネルギーを自律的に活用する住宅への転換を意味しています。太陽光発電の普及が進む一方で、昼間に発電した電力をいかに効率的に活用するかが重要な課題となっています。蓄電池は、その時間的な需給ギャップを調整するとともに、停電時の生活維持にも大きく貢献します。近年頻発する災害を考えれば、ZEHは脱炭素だけでなく、住宅のレジリエンス向上という観点からも大きな役割を担うものと言えます。
また、高断熱・高気密住宅は、省エネルギー性能の向上だけでなく、健康維持にも寄与することが明らかになってきています。室温環境の改善によるヒートショックリスクの低減や、循環器系疾患リスクの改善など、多くの研究成果が蓄積されています。これからの住宅には、「省エネ」「健康」「快適」「防災」を総合的に実現することが求められており、ZEHはその方向性を示す重要な指標となるでしょう。
一方で、ZEHの実現は単に数値性能を追求するだけでは達成できません。設計者、工務店、住宅メーカーには、断熱・気密施工の品質向上はもちろんのこと、自然採光や通風、開放性など、住まい本来の豊かさとの調和が求められます。性能だけを優先した住まいではなく、居住者が長く快適に暮らせる住宅を提案していくことが重要です。
さらに、今後は新築住宅だけでなく、既存住宅のZEH化も大きなテーマとなります。段階的な断熱改修、省エネ設備更新、買取再販時の性能向上など、多様な手法を活用しながら、住宅ストック全体の脱炭素化を進めていかなければなりません。
当団体としても、今後さらに情報発信、人材育成、技術支援を通じて、持続可能で豊かな住環境の実現に向け、関係者の皆様とともに取り組んでまいります。今後とも皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
代表理事プロフィール
芝浦工業大学 建築学部長・教授
秋 元 孝 之(あきもと たかし)
早稲田大学大学院修了。カリフォルニア大学バークレー校環境計画研究所に留学。博士(工学)、一級建築士。清水建設株式会社、関東学院大学工学部を経て、現在、芝浦工業大学建築学部長・教授。(一社)建築設備綜合協会 会長、(公社)空気調和・衛生工学会 会長、等を歴任。日本建築学会賞(論文)、空気調和・衛生工学会賞技術賞、ASHRAE Technology Award新築オフィス部門最優秀賞、等を受賞。


